公開日:

スティーブンキング『悪魔の嵐』感想~気分が落ち込む冬のホラー

storm

10数年前にNHKで三夜連続かなんかで放送された『悪魔の嵐(原題 STORM OF THE CENTURY)』

たった一度観ただけなのに、今でも吹雪の日や大雨の夜になると思い出す。

『悪魔の嵐』は、最近「IT」で話題のスティーブンキングがアメリカのTVドラマ(1999年)のために書き下ろしたものなので、キングの小説の世界をそのまま映像で楽しむことができる作品です。

驚かす系のホラーではなく、人間の深層心理をえぐるような、じわじわ追い詰められる怖さ、ツラさ、後味の悪さで気分がズドーンと落ち込みます。

こういうのもたまに観たくなるのよね。残念ながら動画配信されてなくて、中古でDVDを購入しました。

1時間半×3話とめちゃ長いのですが、引き込まれてあっという間です。予想以上に気分が滅入ります。

1話:事件の始まり

1989年、メーン州にある田舎の島が舞台。

嵐がもうすぐ来そうなある日、老婆がリノージュという男に殺される。

リノージュ曰く

「私が望むものを渡せば出て行く」

とのこと。しかし”望むもの”は一向に教えてくれず、余計なことばっかり言い出すリノージュ

町長のロビーには、母親がネズミがいるような老人ホームで孤独に死んだ時、娼婦と一緒にいた。とか

魚の卸売業者・ピーターには、景気は悪いけどマリファナを売ってるから心配ないよな。とか

スーパーの店員のキャットには、親や彼氏に内緒で中絶したことを暴露。それを聞いた彼氏が怒ると、鼻血がドバー。その彼氏は、ジェナと浮気してるらしい。

なぜだかリノージュは個人の秘密を知っていた。

これはホラーだわ…。胸の奥をチクリと刺すのが上手

不気味なリノージュを警察署長のマイクが捕まえ留置所へ

悪魔の洗脳

吹雪が強くなり、本土との通信が途絶える。島民たちは次々と町役場に避難した。

リノージュを見張っていたピーターがおかしくなって、ひたすらペンを走らせる。

GIVE ME WHAT I WANT AND I’ll GO AWAY.(望むものを渡せば出て行く)

メモを残し、自ら縄を首にかけ、自殺した。

一方、消防署にいたロイドは、同じメッセージを残し、斧で自分の頭をかち割り死亡。

どうやらリノージュに遠隔操作されてる?結局”望むもの”を教えてもらえず1話の幕が閉じる。

これは相当気分が重い…。でも結末が気になる

2話:秘密の暴露

ひどい吹雪で本土との連絡も出来ず、孤立状態の島。

謎の自殺と謎の遺書に不安な島民たち。閉塞感がすごい。

リノージュはお得意の秘密の暴露

マイクは大学2年のとき奨学金が危うくなりそうでカンニングをしたとか。息子にいつか言えよだってさ。これは可愛い秘密

一方、ジャックは去年、暴行事件を起こしていた。オカマの少年が気に食わなくて片目をつぶしたらしい。これも息子に話してやれよだってさ。暴露のレベルが人によって違うんですけど…

島民の混乱

中絶のことを暴露されたキャットはビリーと話し合い。勝手に堕ろしたことを激怒するビリー。キャットはジェナとの浮気を突き付けるが、ビリーは開き直る。

これは永遠に平行線…

狼の頭の杖を見つけたキャットはビリーをぼっこぼこ。男子なら抵抗できそうだけど、最初の一撃が急所だったのだろう…

「愛しているから毛布をかけた」

倉庫でビリーを殺したキャットは座り込んでいた。あちゃー。

避難所では認知症っぽい老婆・コーラがおかしくなっていた。洗面器に水を溜め、自ら顔を突っ込み溺死。

鏡には口紅で「望むものを渡せば出て行く」とメッセージが残されていた

みんな死ぬ前にダイイングメッセージを残すけど、遠回しの表現に気持ちを汲み取るのが面倒だから、はっきり教えてほしいよね。

マイクの美人妻モリー

仕事がくっそ忙しい警察署長のマイクに「心配だから帰ってきて」とかわがままを言う美人妻のモリー。

マイクはちゃんと言う事を聞いてあげて、キスしに帰ってきてくれる。心までイケメン旦那

問題を早く片付けてほしい嫁は、リノージュを裁判にかけずに

「片づけちゃえばいいのよ。事故に見せかけて…」

嫁こわー。夫を実行犯にしようとしてる…。

マイク自身も迷い始めてるけど、人一倍正義感が強いから、そんな選択はしなそうだよね。

追い込まれる島民たち

リノージュを監視していた町長のロビーは、リノージュが死んだ母親になって見えた。死ぬ前に息子を探す母の姿を見て、ロビーは気が狂う。

ちょっとこれは気の毒だわ…

テレビのニュースでは、嵐で島に取り残された200人の行方がわからなくなったと報じていた。

1587年、ヴァージニアのロアノーク村で全ての住民が消えた事件があった。それと酷似しているとのこと。

行方不明のまま未解決事件となっているが、実は男の望みを聞かなかった代償として、住民は荒れる海に身を投じて集団自殺していた。

実はそれは夢で、みんな同じものを見ていた。

その翌朝、高波により灯台が倒れそうだということで、猛吹雪の中、みんな見学へ(なぜ?)

倒れる灯台に集中していると、何人か姿を消した(なにやってんのよもー)

灯台は外界との唯一の繋がりだったんだろうね。それがなくなってしまて、島民たちの孤立感や切迫感が大きくなるばかり

救いが無くてずっと暗い。暗すぎる…

3話:人質の子供たち

「私は小さなティーポット~♪」

勝手に歌いだす子供たち。犬の頭がついた杖に触ると次々と気絶する。

子供たちは目を覚まさず、大人たちは不安のピーク。

そんなとき、灯台を見学中にいなくなったアンジーが生きて発見される。

”望むもの”は何なのか発表するから、今夜集会を開けと、リノージュから伝言を預かったとのこと。望むものを渡さなければみんな殺されるらしい…

望むものが何だかわからないけど、助かるため絶対渡そうと、島民たちの気持ちが一致してる模様

「なんで私たちなの…?」
「私たちには秘密が守れるからよ」

リノージュの悪態

言いつけ通り全員集まった集会室に、リノージュが現れる。

やっと望みの物を教えてくれると思いきや、性格悪いよね。またまた余計なことをチクリチクリ。島民全員集まってるのにやめたげて…

島に3歳児くらいの子供しかいないのがずっと不思議だったんだけど、小中高生は本土で足止めを食らってたんだね。

学校をずる休みしたディビーホープウェル。リノージュから父親は泥棒だと明かされる。勤務先から横領してギャンブルにつぎ込み全て失ったらしい。

学校を休んだばっかりに…かわいそ…

ジョニーハリマンは解雇された工場を放火したとか。友人のカークも手伝った。70人が職を失ったけど仕返しが出来たからOKだよね。とか痛いところを突く

君たちが暴力をふるったゲイの少年に会いに行かないのか?

ジャックとルシアンとアレックスが少年の片目をつぶしたとか発表。妻がいる前でこれはやっばい。

そしてロビーの母親の姿になるリノージュ。老人ホームで孤独に死んだことを恨みつらみをねちねちと。これは他の人とは悪さの種類が違うよね。ロビーだけは許してあげてほしいわ

”望むもの”の発表

気を失っている子供たちは今、リノージュと空を飛んでいた。リノージュが手を離せば真っ逆さま。

自分の秘密も暴露されたくないし、子供たちも助けたい。もうこれはリノージュの望みを聞くしか選択肢がない状況に追い込まれてる。

リノージュの欲しいものは「1人の子供」その子を悪魔の後継者にしたいんだとな。

マイクはバカバカしい望みを拒絶するが、島民たちは助かるために従おうとしてる…

味方だと思っていた嫁のモリーまで冷たい視線…。これはツライなぁ…

30分時間をあげるから島民で話し合えとな

話し合い

町長のロビーが議長となり、島全体の議事が始まる。

議題:自分たちの子供1人を差し出すかどうか

A案:子供を差し出して島を出て行ってもらう

B案:望みを断って仕返しに耐える

正義感の強いマイクは、子供を差し出さずに、リノージュと戦って追い払おうと熱弁。

しかし島民たちは、もしそれが出来たとしても、空を飛んでいる子供たち全員が殺されるかも。8人死ぬより1人差し出す方がいいんじゃね?って意見が多数

それを正論とするために、養子に出すと思えばいいよね?とか、悪魔になれば普通より長生きも出来るし、とかトンデモ理論を展開して納得しようとしてる。

マイクは、それなら8人の親だけで投票しよう、と提案するが、ひとり親の女性が自分だけでは決められないとか言いだす始末。

じゃあ、島民全体で多数決で決めようという流れへ

マイクの意思に反して話が進んでゆくもんだから「自分と息子は参加しない」とか勝手なこと言い出すと、

「そうはいかないわ。自分たちの義務から逃げちゃいけないわ、マイク」

はぁ…嫁…完全に多数派の意見に流されてる…

時間となり、ロビーが議決を取ると、マイク以外全員が賛成に挙手をした。A案に可決される。

8人のうちの1人

その時、リノージュが現れ、正しい選択だと島民を褒める。

7つの白い石と黒い石が1つ。子供たちの親に1人ずつ出てきてもらい、石を引いてもらう。

予想通りモリーが黒い石を引いた。ガーン

モリーは自分から参加したくせに息子を渡したくないとか、インチキだとか抗議して悪あがき。こういう人いるよね

悪魔のリノージュはラルフィーを連れて島から姿を消した。

半年後

マイクはモリーと離婚して島を出て行った。

これは人間不信になるよな~

1989年の事件をきっかけに、島民たちの人間関係が崩れて色々起こるが、みな口を閉ざし何も語ろうとしない。

マイクは全て代償を支払ったと思っていた。

しかし、事件から9年後、悪魔と歩く少年になったラルフィーとすれ違う。ラルフィーは悪魔になっていた。

マイクはそのことを元嫁に伝えなかった。夜になると言えばよかったと思うことがあるが、昼になると理性が働き思い直す –end–

お、お、重い、重すぎる…

最後マイクがモリーへの優しさを示したのは良かったけど、マイクが報われな過ぎていたたまれない。

息子は死んだと思うことで吹っ切れたつもりだったのに、悪魔として生き続けていることを目の当たりにしてしまった。警察官のマイクにとっては、罪を犯す息子にやりきれないだろうな。しかも大人がそうなるように仕向けてしまった。

この出会いもリノージュの仕組んだことなんだろう…どんだけ性格が悪いんだ…さすが悪魔

あとがき

多数決の怖さたるや

一見平等に思えるけど、リノージュのいいように操られてしまったね。恐怖で思考停止にして、従うしかないと思い込ませた。

マイクは最後まで反対したけど、これが民主主義の問題点。多数決だと少数派の意見が全く反映されない。

さらに、全員が決定に関わってると責任の所在も曖昧になるし、自分の選択ミスでもあるから声に出せない。

10数年前にたった一度観ただけなのに、今でも怖い気持ちが記憶として残ってるなんてすごいよね。今回、観返してみたけど、予想以上に心理的ダメージが大きい。悪魔より人間の集団心理が怖い…


コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください